受入企業の事業内容が変更された場合、特定技能外国人の在留資格に影響するかどうかは、変更の内容によって異なります。法人格そのものが変わるような変更(吸収合併・会社分割・個人事業主の法人成りなど)は在留資格変更許可申請が必要になる場合があります。一方、同一法人内での事業内容の一部変更であっても、外国人が従事する業務や分野の適合性に影響する場合は届出や申請が求められます。いずれのケースも、変更の事実が判明した時点で速やかに地方出入国在留管理局(以下「入管」)へ相談することが基本的な対応です。
結論と要点
- 法人格に変動が生じる変更(合併・分割・法人成りなど)は、在留資格変更許可申請が必要になる場合があり、変更の発生が分かり次第、速やかに入管へ相談する必要がある。
- 同一法人内の事業内容変更でも、外国人が従事する業務が特定技能の対象分野・業務区分に引き続き合致するかどうかを確認しなければならない。
- 雇用契約の内容や支援計画に変更が生じる場合は、各種届出が別途必要になる。
- 変更後も適法な活動が継続できるかどうかは個別事情によるため、入管への事前相談が不可欠であり、「必ず許可される」「自動的に継続できる」とは断言できない。
1. 「事業内容の変更」とは何を指すか

一口に「受入企業の事業内容が変更された」といっても、その実態はさまざまです。在留資格への影響を検討するうえでは、変更の性質を大きく三つに分けて整理することが有効です。
| 変更の種類 | 具体例 | 在留資格への影響の方向性 |
|---|---|---|
| 法人格の変動を伴う変更 | 吸収合併、新設合併、会社分割、個人事業主の法人成り | 在留資格変更許可申請が必要になる場合がある |
| 雇用主体・契約内容の変更 | 事業部門の分社化に伴う雇用契約の承継、代表者交代 | 指定書の所属機関情報との整合性確認が必要。届出または申請が必要になる場合がある |
| 同一法人内の業務内容変更 | 新規事業への参入、事業縮小、従事業務の変更 | 対象分野・業務区分への適合性を改めて確認する必要がある |
前提として確認すること
特定技能外国人の在留カードには「特定技能所属機関(受入企業)」と「特定産業分野」が指定書に記載されています。この指定内容と実態が一致しなくなった場合、在留資格の根拠が揺らぐ可能性があります。変更の性質が上記のどれに該当するかを最初に確認してください。
2. 法人格の変動を伴う場合は在留資格変更許可申請が必要になる場合がある

出入国在留管理庁が公表している「特定技能外国人受入れに関する運用要領」(令和8年8月版)には、以下の記載があります。
「個人事業主が亡くなったり、法人化したり、また、法人が吸収合併や吸収分割等により、特定技能所属機関の法人格に変動が生じたときは、在留資格変更許可申請を行わなければならない場合がありますので、当該事由が発生することがわかり次第速やかに地方出入国在留管理局に相談してください。」(特定技能外国人受入れに関する運用要領 第4節 第1)
つまり、法人格の変動があれば一律に申請が必要というわけではなく、「必要になる場合がある」という表現が使われています。どの変更が申請を要するかは個別の事情によるため、変更の発生が見込まれた時点で入管に相談することが求められています。
「法人格の変動」とは
吸収合併では消滅会社の法人格がなくなり、存続会社が引き継ぎます。会社分割では事業の一部が別法人に移ります。個人事業主が法人成りする場合も、雇用の主体が個人から法人へと変わります。いずれも、在留資格の指定書に記載されている「本邦の公私の機関」(特定技能所属機関)が実質的に別の主体に変わることを意味します。雇用契約の承継が自動的に在留資格の継続を保証するわけではない点に注意が必要です。
会社合併・分割の場合に整理すべき事項
- 合併後の存続法人または分割後の承継法人が、特定技能所属機関の基準(欠格事由がないこと、社会保険への加入、支援体制の確保など)を引き続き満たすかどうか。
- 特定技能雇用契約が新たな法人との間で有効に締結(または承継)されているかどうか。
- 指定書に記載されている所属機関の情報と実態が一致しなくなる場合、変更申請または届出のいずれが必要かを入管に確認すること。
- 登録支援機関に支援を委託している場合、委託契約の当事者が変わるかどうかも確認が必要。
3. 同一法人内の事業内容変更でも業務適合性の確認が必要
法人格は変わらなくても、受入企業が新規事業に参入したり、従来の事業を縮小・廃止したりした結果、外国人が従事する業務の内容が変わることがあります。この場合、変更後の業務が引き続き特定技能の対象分野・業務区分に該当するかどうかを確認することが必要です。
「特定産業分野」と「業務区分」の意味
特定技能制度では、外食業・介護・建設・製造業など16の特定産業分野が定められており(出入国管理及び難民認定法に基づく法務省令)、さらに各分野内で従事できる業務区分が分野別運用方針によって細かく定められています。外国人は指定書に記された分野・機関の範囲でしか活動できません。
業務内容変更時に確認すべきポイント
- 変更後の業務が、指定書に記載された特定産業分野の業務区分に引き続き含まれるか。
- 雇用契約書の業務内容記載が変更後の実態と一致しているか。
- 変更後の業務が別分野に該当する場合、在留資格変更許可申請(分野変更)が必要になる。
- 変更後の業務が特定技能の対象外となる場合、就労継続そのものが認められなくなる可能性がある。
仮の例による説明(架空の例です)
たとえば、飲食料品製造業分野で特定技能外国人を雇用していた企業が、同一法人内で外食事業を新設し、外国人をその業務に従事させる場合を考えます。飲食料品製造業と外食業は別の特定産業分野です。指定書に記載された分野と異なる業務に従事させることは認められないため、在留資格変更許可申請が必要になります。変更許可を受ける前に新分野の業務を開始することはできません。
4. 届出義務と変更申請の違い
受入企業側が行う手続きには、「届出」と「在留資格変更許可申請」の二種類があり、混同しないことが重要です。
| 手続きの種類 | 主な対象となる変更 | 窓口 |
|---|---|---|
| 特定技能所属機関による各種届出 | 受入企業の名称・所在地・代表者の変更、雇用契約の内容変更(賃金・業務内容など)、支援委託先の変更など | 地方出入国在留管理局(届出書類の様式は出入国在留管理庁ホームページで公開) |
| 在留資格変更許可申請 | 法人格の変動、従事分野の変更、所属機関そのものの変更など、指定書の記載内容が実質的に変わる場合 | 地方出入国在留管理局 |
どちらの手続きが必要かは変更の内容によって異なります。届出で足りるケースと申請が必要なケースを誤ると、活動の適法性に問題が生じる可能性があります。変更の内容が確定した段階で、入管に相談して手続きの種類と必要書類を確認することが重要です。
在留資格の変更申請や届出の手続きについては、在留資格の手続きサービス一覧でも対応の概要を確認できます。
5. 変更中・申請中の外国人の就労について
会社合併や分割、分野変更などに伴い在留資格変更許可申請を行っている期間中の就労については、注意が必要です。出入国在留管理庁が公表する公式Q&A(Q42等)および支援運用要領によれば、変更許可(在留カードの受領)前の新たな活動への従事は認められないとされています。申請中であれば自動的に新しい業務を開始できるわけではありません。
申請中の期間に関する注意点
- 在留期限が申請中に到来する場合の「特例期間」の適用要件は、在留期限更新・変更の申請を適法に行っていることが前提であり、無期限に就労が延長されるものではない。
- 法人格の変動により旧契約に基づく就労の継続が困難になった場合、外国人が就労できない状態が生じないよう、変更の発生前から準備を進めることが望ましい。
- 手続きの遅延によって外国人が不法就労の状態に陥ることを防ぐため、変更が見込まれた段階で入管に相談することが求められる。
6. 支援体制への影響も確認が必要
特定技能1号の外国人を受け入れている場合、受入企業(特定技能所属機関)は1号特定技能外国人支援計画を策定し、義務的支援を実施する義務を負います。会社合併や事業変更に伴い、支援の担当者・体制・委託先が変わる場合には、支援計画の変更と関連する届出が必要になります。 関連する内容は「登録支援機関とは?|特定技能外国人の雇用の強い味方」でも解説しています。
特定技能基準省令および1号特定技能外国人支援に関する運用要領(令和7年4月1日改正版)によれば、特定技能所属機関は1号特定技能外国人支援計画の基準に適合した支援を継続して実施する義務を負います。支援体制に空白が生じないよう、変更前から準備を進める必要があります。
登録支援機関への委託を検討している場合や現在の委託内容を見直す必要がある場合は、登録支援機関の支援サービスの内容と委託範囲の考え方も参考にしてください。
7. よくある質問(FAQ)
Q. 受入企業が吸収合併された場合、特定技能外国人はそのまま働き続けられますか?
A. 合併によって法人格に変動が生じる場合、在留資格変更許可申請が必要になる場合があります。存続法人が特定技能所属機関の基準を満たすかどうか、雇用契約の承継が適正に行われているかどうかを確認したうえで、入管へ相談することが必要です。変更許可を受ける前に新法人のもとで就労を継続することが認められるかどうかは、個別の事情によるため、変更の発生が見込まれた段階で早めに入管に相談してください。
Q. 同じ会社で新しい事業を始め、外国人をその業務に従事させる場合はどうなりますか?
A. 新しい業務が指定書に記載された特定産業分野の業務区分に含まれるかどうかを確認することが必要です。同一分野の業務区分内であれば届出のみで対応できる場合がありますが、別分野の業務に当たる場合は在留資格変更許可申請が必要です。変更許可前に新業務に従事させることは認められません。
Q. 会社の代表者が交代した場合も申請や届出が必要ですか?
A. 代表者の交代は特定技能所属機関の届出事項に該当します。法人格そのものが変わるわけではないため、在留資格変更許可申請が直ちに必要になるわけではありませんが、届出の種類と期限については出入国在留管理庁の公式案内または管轄入管で確認してください。欠格事由の有無など、新代表者に関する基準適合性も改めて確認が必要です。
Q. 変更が生じた場合、外国人本人が行う手続きはありますか?
A. 在留資格変更許可申請は外国人本人が申請人となります。受入企業が手続きを主導する場合でも、申請書類への署名など本人の関与が必要な場面があります。また、在留カードの記載事項に変更が生じる場合は市区町村または入管への届出が必要になることがあります。手続きの範囲は変更の内容によって異なるため、入管への確認が必要です。
Q. 手続きが完了するまでの間、外国人は在留し続けられますか?
A. 在留期限内に適法な申請が行われている場合、在留期限に関する特例期間の制度が存在しますが、それがすべての場合に適用されるわけではなく、就労活動の継続が当然に認められるわけでもありません。申請中の活動範囲は個別の事情によるため、入管への相談を通じて確認することが必要です。
まとめ
受入企業の事業内容変更が特定技能外国人の在留資格に与える影響は、変更の性質によって大きく異なります。
- 法人格の変動(合併・分割・法人成りなど)は在留資格変更許可申請が必要になる場合があり、変更の発生が分かり次第、速やかに入管へ相談することが運用要領上も求められている。
- 同一法人内の業務変更であっても、変更後の業務が特定産業分野の業務区分に合致するかどうかを確認することが必要であり、別分野に当たる場合は在留資格変更許可申請が求められる。
- 届出と変更許可申請は異なる手続きであり、どちらが必要かは変更の内容によって判断する。
- 支援体制にも変更が生じる場合は、支援計画の変更と届出を別途行う必要がある。
- 変更許可を受ける前に新たな業務・分野での就労を開始することは認められない。
- いずれのケースも個別事情によって判断が異なるため、変更の発生が見込まれた段階で管轄の地方出入国在留管理局に相談することが最も重要な対応である。
手続きの内容や必要書類については、採用から就労までの手続きの流れも参考にしながら、具体的な状況に応じた確認を行うことを推奨します。
一次資料
- 出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」(令和8年8月版)
https://www.moj.go.jp/isa/content/001468647.pdf - 出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」(令和7年4月1日改正版)
https://www.moj.go.jp/isa/content/930004553.pdf - 出入国在留管理庁「特定技能運用要領掲載ページ」
https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/nyuukokukanri07_00201.html - 出入国在留管理庁「特定技能FAQ(公式Q&A)」
https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/faq.html
